春琴抄

歌手: 田中理恵 • 专辑:あの声優が読むあの名作 • 发布时间:2010-07-29
佐助
痛くはなかったか
と春琴が云った
いいえ  痛いことはござりませなんだ
お師匠様の大難に比べましたら
これしきのことが何でござりましょう
あの晩曲者(くせもの)が忍(しの)び入り
辛き目をおさせ申したのを知らずに睡(ねむ)っておりましたのは
返す返すも私の不調法
毎夜お次の間に寝させて戴(いただ)くのは
こう云う時の用心でござりますのに
このような大事を惹(ひ)き起し
お師匠様を苦しめて自分が無事でおりましては
何としても心が済まず
罰(ばち)が当ってくれたらよいと存じまして
なにとぞわたくしにも災難(さいなん)をお授け下さりませ
こうしていては申訳(もうしわけ)の道が立ちませぬと
御霊様に祈願(きがん)をかけ
朝夕拝(おが)んでおりました効が
あって有難や望みが叶(かな)い
今朝(けさ)起きましたらこの通り両眼が潰(つぶ)れておりました
定めし神様も私の志を憐(あわ)れみ
願いを聞き届けて下すったのでござりましょう
お師匠様
お師匠様
私にはお師匠様のお変りなされたお姿は見えませぬ
今も見えておりますのは三十年来
眼の底に沁(し)みついたあのなつかしいお顔ばかりでござります
なにとぞ
今まで通りお心置きのうお側(そば)に使って下さりませ
俄盲目(にわかめくら)の悲しさには立ち居も儘(まま)ならず
ご用を勤めますのにもたどたどしゅうござりましょうが
せめて御身の周りのお世話だけは
人手を借りとうござりませぬと、
春琴の顔のありかと思われる
仄白(ほのじろ)い円光の射して来る方へ盲(し)いた眼を向けると
よくも決心してくれました
嬉しゅう思うぞえ、
私は誰の恨(うら)みを受けて
このような目に遭(お)うたのか知れぬが
ほんとうの心を打ち明けるなら
今の姿を外(ほか)の人には見られても
お前にだけは見られとうない
それをようこそ察してくれました。
あ、あり難(がと)うござります
そのお言葉を伺(うかが)いました嬉しさは
両眼を失うたぐらいには換(か)えられませぬ
お師匠様や私を悲嘆に暮(く)れさせ
不仕合わせな目に遭(あ)わせようとした奴(やつ)は
どこの何者か存じませぬが
お師匠様のお顔を変えて
私を困らしてやると云うなら
私はそれを見ないばかりでござります
私さえ目しいになりましたら
お師匠様のご災難は無かったのも同然、
せっかくの悪企(わるだく)みも水の泡(あわ)になり
定めし其奴(そやつ)は
案に相違していることでござりましょう
ほんに私(わたくし)は不仕合わせどころか
この上もなく仕合わせでござります
卑怯(ひきょう)な奴の裏(うら)を掻(か)き
鼻をあかしてやったかと思えば
胸がすくようでござります
佐助
もう何も云やんな
と盲人の師弟相擁して泣いた
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